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ひがんすぎまで
彼岸過迄
線上閱讀夏目 漱石《彼岸過迄(ひがんすぎまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 頁
「なにそりゃ聞かないでも構いません。あなたの事だから。話したくなければ話さないでも差支ない」
田口はこう云って、自分の前に引きつけた手提煙草盆の抽出を開けると、その中から角でできた細長い耳掻を捜し出した。それを右の耳の中に入れて、さも痒ゆそうに掻き廻した。敬太郎は見ないふりをしてわざと自分を見ているような、また耳だけに気を取られているような、田口の蹙面を薄気味悪く感じた。
「実は停留所に女が一人立っていたのです」と彼はとうとう自白してしまった。
「年寄ですか、若い女ですか」
「若い女です」
「なるほど」
田口はただ一口こう云っただけで、何とも後を継いでくれなかった。敬太郎も頓挫したなり言葉を途切らした。二人はしばらく差向いのまま口を聞かずにいた。
「いや、若かろうが年寄だろうが、その婦人の事を聞くのはよくなかった。それはあなただけに関係のある事なんでしょうから、止しにしましょう。私の方じゃただ顔に黒子のある男について、研究の結果さえ伺がえばいいんだから」
「しかしその女が黒子のある人の行動に始終入り込んでくるのです。第一女の方で男を待ち合わしていたのですから」