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ひがんすぎまで
彼岸過迄
線上閱讀夏目 漱石《彼岸過迄(ひがんすぎまで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 頁
娘は何でこういう人に引き合されるのか、ちょっと解しかねた風をしながら、極めてよそよそしく叮嚀な挨拶をした。敬太郎が千代子という名を覚えたのはその時の事であった。
これが田口の家庭に接触した始めての機会になって、敬太郎はその後も用事なり訪問なりに縁を藉りて、同じ人の門を潜る事が多くなった。時々は玄関脇の書生部屋へ這入って、かつて電話で口を利き合った事のある書生と世間話さえした。奥へも無論通る必要が生じて来た。細君に呼ばれて内向の用を足す場合もあった。中学校へ行く長男から英語の質問を受けて窮する事も稀ではなかった。出入の度数がこう重なるにつれて、敬太郎が二人の娘に接近する機会も自然多くなって来たが、一種間の延びた彼の調子と、比較的引き締った田口の家風と、差向いで坐る時間の欠乏とが、容易に打ち解けがたい境遇に彼らを置き去りにした。彼らの間に取り換わされた言葉は、無論形式だけを重んずる堅苦しいものではなかったが、大抵は五分とかからない当用に過ぎないので、親しみはそれほど出る暇がなかった。彼らが公然と膝を突き合わせて、例になく長い時間を、遠慮の交らない談話に更かしたのは、正月半ばの歌留多会の折であった。