輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《忘れ残りの記(わすれのこりのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 頁

青空文庫

高瀬氏は横浜一流の紳商であり、海運業界でも人格者といわれていた。その高瀬氏が怒ったのだ。そして「吉川を横浜におかない」と云い、「徹底的に屠る」とも云ったそうである。横浜貿易新報や、毎朝新聞などにも出て、父の野蛮な一拳は、しばらく人の話題になったものらしい。

もし、父を知る者はその子だ――ということをゆるして貰えるならば、ぼくの父はいかにもそんな事をやりかねない人であった。理性もないではないが、何かに激すと、理性より先に発しるものに、理性が間にあわなくなるのである。

それでも、後から理性を取戻して、詫びるとか、人に円満な解決を頼むとか、弥縫の方法を持ちうる人もあるが、父のは、やってしまうと、自身では内心悔いていても、さらにその非理性を正当化しようとして突ッ張り抜く二重の頑固さがあった。――高瀬氏のばあいなどもそれで、新聞記事を見て驚いた母は、さっそく翌朝、カゴ虎の俥をとばして、高瀬氏の仲通りの本邸にゆき、父に代ってさんざん詫びて帰ったのであったが、数日後、それが父に分ると、父は「貴さまからして、おれを高瀬に謝らせる気か。出しゃ張りをするな」と、母をも撲りそうにしたということである。