輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《忘れ残りの記(わすれのこりのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 頁

青空文庫

小さい筆禍

こめかみが痛くなるまで泣きじゃくッてしまった。そして、いつかぼくが、女中の貞を、そこの薄暗い壁の隅ッこへ押しつけて、本でぴしゃぴしゃと撲ったことが慟哭の中で思い出されていた。

小さい筆禍

川村印章店は馬車道から横浜公園へ向って柳並木になっていた住吉町通りの角から東側へ二軒目のちんまりした一店舗だった。中村梧竹の篆字で「川村印房」とした彫看板が表二階の屋根半分を隠していた。そこの小さい商品棚に、紫水晶、象牙、めのう、水牛などの印材朱肉入れの類が並んでいるのに気づかなければ、ちょっと見、何屋だか分らない構えだった。わざわざお客の足を入り難くしているのかと疑われるような重い硝子がいつも内と往来をぴたりと立てへだてていた。

店内の小狭い土間は凸字形になっていて支那風の磚で埋めてあった。客用の腰掛が三つ四つ不愛嬌に備えてある。畳敷きの上がり框は、その凸字形の土間から両側へ区分されていて、店主は這入って右寄りの方の畳の間に紫檀の小机をすえ、好みの文房具やら印譜などを並べて、ちょっとした煎茶家か文人の書斎めかしたそこへ坐って、時々、頬杖ついているにすぎなかった。