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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁
腰から上の半身が、月光の中に晒らされている。背がムクムクと波を打つ。それにつれて肩がS形にうねる。左の胴から黒いものが、ズルズルズルズル引き出されている。昼間見たら真っ赤に見えただろう、傷口から流れ出る血なのだから。と、まったく動かなくなった。
「どうした島路」という声がした。土塀の上のもう一人である。と、ヒラリと飛び下りた。「不覚だの、転んだのか?」
腰をかがめて覗き込んだ。
そこを目掛けて旗二郎、またもスルスルといざり出たが、今度は瞬間にスッと伸ばし、背高々と爪立ったが、こんな場合だ、卑怯ではない。声も掛けずに背後から、後脳を目掛けてただ一刀! ザックリ割って飛びしさった。
すぐに木影へ隠れたのである。
九
ガッ! といったような気味の悪い悲鳴、一声立てたが切られた武士だ。枯れ木仆しにそのままに、前方へドッと仆れたので、前に仆れていた死骸の上へ、蔽うようにして転がった。
月光それを照らしている。
急所を一刀に割られたのである。躰に痙攣を起こしもせず、静まり返って死んだらしい。
「二人仕止めた、これだけかな」
木影に立った旗二郎、決して決して油断はしない、血刀を下段に付けながら、眼で塀の上を見上げながら、さすがに少しばかり切迫する、胸の呼吸を静めながら、こう口の中で呟いた。