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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
ただ、此の不思議な色鉛筆の蒐集品だけが、テエブルの上で彼の頭と心にある色彩を見せていたようである。
大森にある白木屋の尖塔を見上げて、或日散歩しながら彼処に時計を篏め込むべきだと、平凡なことを彼はいった。べつに建築家として私の注意を惹いた言葉の発見はない、庭園樹木に対する考えにも変った意匠の話をしたことがなかった。訪ねて見た彼の書斎にも、特異な趣向は見られなかったが、例の帆柱に二階を結びつけたような構造だけが、今日の私の頭にのこっている。この正体の異常さは一たい何であるのか、今日に於てもよく私には判らなかった。
或る夏、三週間くらい、立原に私の家の留守番をして貰ったことがあったが、その間に私は急用が出来て夕方頃、大森の家に帰った。立原は友人二人と、座敷のまん中に腰を下ろす箱を置き、同じ箱を二つ重ねてテエブルのかわりに拵え、電灯をその上に引きおろして雑談最中であった。いつも椅子に坐っている彼はこんなふうに、座敷の拵えを更めて住んでいた。
立原は私の顔を見ると急いで林檎箱一つを抱え、その友人もまた各々一つを提げると、またたく間にそれらの椅子とテエブルを片づけてしまった。