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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
堀辰雄
昭和二十八年九月三日胃癌で永眠、「いまははた 老いかゞまりて、誰よりもかれよりも 低き しはぶきをする」「かくひとり老いかゞまりて ひとのみな憎む日はやく 到りけるかも」これが迢空の絶唱となった。三唱して私は、このえがたい詩人を思う。
堀辰雄
明治四十年、向島土手下の小さい煙草を商う家に、堀辰雄は、祖母と母親にまもられ、かぞえ年四歳になっていた。隅田川の橋を渡って浅草公園に、いつも母親と遊びに行ったが、やはり子供を遊ばせている母親達が辰雄の顔を見ながら、つくづく言った。
「このお子さんは何という俳優のお子さんですか。」
日南地に集まった母親達はこの可愛らしい子供を、どれ、おばさんにも抱っこさせてといい、知らぬ小母さん達に抱き上げられた。よくふとった難の打ちどころのない辰雄の円い顔は、母親の血色をうけ継いで頬も照っていた。
堀の父、上条寿則は彫金師であった。その時代ではそろそろ牛肉も家庭で食べ初めていたのに、堀の家では牛肉はまだ邪物と言われ、家では煮ることをしなかった。だから、辰雄に牛肉を食べさせる時には、やはり公園のすき焼を兼ねた西洋料理店に連れて行って食べさせた。