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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

真面目な墨書きの巻紙で五尺に及んでいるものさえあった。悉く原稿にあふれた文章がその日に書く手紙に、あふれ注いでいた感じがあった。一たいに原稿のなまなましたあふれを示している作家詩人というものは、僅か一枚の葉書にもそのこぼれが美しく点出されているものだ、私の家では家内をはじめ娘や息子までが、立原から墨がきの手紙を、それぞれに貰っている。もっとも私の家内なぞ街の中央に出てゆくと、建築事務所に態々電話をかけてお昼の食事に立原を呼んで、彼の愉快そうな様子の話をきくのが、わすられない面白い事であったらしい。長身でふわふわと宙にまい上るような歩き方に愛嬌があったのだ。

彼はいつも軽井沢の私の家に先き廻りして、追分から出て来ると、次ぎの列車で堀さんも今日は出て来るといい、それがその日の一等愉しい事であるらしかった。

列車が着く時間になると、表の通りに出て行ってもうそろそろ来る時分だが、お客でもあったのかと独り言をいい、落ち着かずそわそわしていた。そうして堀の姿が丘の上に現われると、嬉しそうに、来た、来た、と言って私に知らせる時なぞ、まれに見る子供っぽい友情のこまかさがあった。