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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

信夫の姉の道子が私の家に現われたのは、昭和四、五年頃だったが、昭和八年に死去された。その間に久子母堂の来訪を受け、これで全家全員と親しいいんねんを続けたわけである。萩原朔太郎の全家の方々とも親しくしていた私は、これで二くみの家庭とゆききするようになったのだ。久子母堂が神戸から上京の折はいつも病弱だから、たいてい一等寝台車だった。私は信夫によくお母さんがお見えになったかどうかと言い、やはり一等寝台かとおそれいったものだ。母親と一等寝台車、そこにもムカシ、ムカシの或る母親のうつくしさがあった。僕も一等寝台で上京して来る母親を持ちたいものだ、それは母親にかぎるものだね、父親は三等でもいいがねと、私は信夫に笑ってそういった。だんだん親しくなると私は信夫のことをノブスケ君と呼び、ノブスケと呼び放しにした。家の娘や息子もやはりノブスケさんと呼び、ノブヲとは呼ばなかった。彼は門から這入って来ると、もう笑いを一杯に顔の中にならべて、おっさん、留守か、と子供達ばかり出て迎える様子にそれを察して言った。子供達は今日はだぶちんは出掛けていない、宜いところに来たと言わんばかりであった。