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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

絹子さんは半ば独り言をいひながら、しばらく立つたまま考へてゐた。※(終わり二重山括弧、1-1-53)

※(始め二重山括弧、1-1-52)「ああ、かうしませう」突然、快活に云つて押入をあけて、大きな風呂敷を出して来た。「どうするのですか」「すみません、それぢや電灯を一寸引張つて下さらない」私は電灯をどうやら、敷居の所まで引張つてきた。絹子さんは「有難う」と云つて、その風呂敷を電灯の背後からかぶせた。私の部屋の方には、明りがさつとながれたが、今度は奥の間が暗くなつた。「それでは、貴女の方が暗くなるでせう」私が訊ねると、「あたくしはいいのよ、すぐ寝つかれますわ」――※(終わり二重山括弧、1-1-53)

この後半には寝つかれない晩の詳細の事が描かれているが、彼が小説に心を向けるための、充分なこまかい見通しと、見逃さない呼吸づかいがこの「碓氷越え」にあった。抄出の文章にもその用意がある。頭がよくて聡明で、そのくせ外部からは快活な一青年としか見えなかったところも、好ましい人がらを持っていた。誰にも好かれ、悪感を持たれないのは性来の快活な性分に基づいているらしい。