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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

「このごろ山村暮鳥の詩を読まうとしてゐる人の多いのは、彼の詩の素直さ、あどけなさ、判りやすさが彼に読者を惹きつけてゐるのであらう、実際は山村の詩はうまい詩ではない、ぎよつとして読み直さうとする気構へを与へるものはないが、何時の間にかその素直さに魅せられてしまふものがある。」こういうふうに後著の序跋にくり返して私は述べていた。併しこの何時の間にか魅せられて了うといういい加減な私の曖昧さを、どう訂正しようもないのは、山村の詩の底に確かりした構えのなかったことを、私は三たび付け加えたい、つまり山村は完成期を俟たずに死んだということが、後期制作に当然在るものが遂に見られなかったことを意味するのである。ああいう敏感と勉強と学識とを持っていた人が、この時代まで辿り着いていたなら、必ず私の驚くものを眼に見せてくれたのであろう。詩人は早く死んではならない、何が何でも生き抜いて書いていなければならないのだ、生きることは詩を毎日書くことと同じことなのだ。私自身にとっても馬齢を重ねて七十にあと一年しかないのだが、四、五年か或いは二、三年前かに死んでいたら、今日の仕事の積みかさなりが見られなかったわけである。