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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
これはまた人類への彼がひそかにしていた予言でもあった。
一読何等の修辞もなく、飾り衒いもなく、見ただけの世界にむかい、彼は何人かを叱り、何人かをいましめていて、しかも荘厳の景色を衒わせていないのである。
桜
冬枯の空に桜は彼女の飾りの無い髪を編んで
すらりと気高く立つてゐる
何と云ふ精緻極る小枝の群
千も万もの愛らしい神秘な小枝が
優しく縺れて
平和に空の下に彼女の美を
意気揚々と示してゐる
この詩がおこされたのは、「彼女の飾りの無い髪を」編んだあたりに、その重い一行のききめから一篇を為すに至ったものに思える。私達はいつも一行をさがすために何ヵ月かかかり、また何ヵ年もかかって見つけるまで、眼と頭の世界にさまようている者である。
この世界にもまた少しも、装飾音のある言葉をならべていない、思うままに彼が辿ろうとしている処に、行きついた感が深い。
どんな女が
どんな女が
どんな子供を抱いてゐるのを見ても
俺は聖母マリヤを思ひ出して
神聖な愛に打たれてしまふ
賤しい下品な顔をした母親が
赤ん坊を抱いてゐるのを町でよく見るが
矢張り美くしい。母の喜びが露骨に見える
赤ん坊は本当に光つてゐる