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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

私はその横山美智子という名前と、雑誌『金の船』の経営者であり美智子の夫君である、横山寿篤のお名前をその時に初めて知ったのである。

当時私は愛酒家であった。まともの奥さんとか夫人とか令嬢とかいう、まじめな婦人と話することを避け、バーとかカフェとか少々いかれて苦労した女の人でなければ、したしむこともしなかった。まともな女の人と話をしてもちっとも面白くはない、窮屈で礼儀正しく冗談も言わないし、坐り方でもきちんとして色気も何も、私の見ようとするものがなかったから、私ははたらく女の人と金の事や苦労の事や、いやな男達の悪口をつくのが好きだった。だからこの十九歳の横山美智子が来ても、優待するとかお世辞なぞ言わないで、童話なぞ私のようなすれっ枯らしの書ける聖話ではないからといい、佐藤春夫は西洋の本もよんでいるから、なにか好い思いつきがあるかも知れない、行ってご覧なさいといって私自身の原稿は断ったのである。まともな女の人をみればすぐ外っ方を向くような変なものを持っていた私は、その変なもので横山美智子をすげなくしてお帰ししたのである。

作家というものは作家同士をすいせんすることは、殆どまれなことである。