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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
餓鬼道のやうに喰ふ我等の晩餐
ふきつのる嵐は
瓦にぶつけて
家鳴震動のけたたましく
われらの食慾は頑健にすすみ
ものを喰らひて己が血となす本能の力に迫られ
やがて飽満の恍惚に入れば
われら静かに手を取つて
心にかぎりなき喜を叫び
かつ祈る (後略)
昭和十六年太平洋戦争にはいると、光太郎はそのころの詩人がみんなしたように、かれも御国のための詩を作り、一つの流行詩の表面にうかんでいた。純潔とお人好しとをうまく釣り上げられたのである。戦争が終ると急に自分がいやになり、「暗愚小伝」を書いて反省した。これがかれの数尠ない生涯のツマズキだったのだ。大臣ならとうに総辞職というところだが、そんな事は誰も咎めない前にかれはあやまった。あれほど用心ぶかく、巨きく純度の高いものをまもりつづけたかれも、ようやく人くさい息吹をついた。私はかれのこの不倖にひとつの本物を感じた。そしてその昇りつめた詩がもはや昇ろうとしないで、ひとつ処にとどまっているのを眺めた。その時、巨大な風船の右の遠方にいまひとつの小さい、若い赤い風船がやはり昇りつめたところに滞まっているのを眼にいれた。