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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

んと何度もムカシ好んで着た紺絣で質素と朴訥の風采を愛しようともがくのだ。

先日といっても昭和三十二年の十一月、私は歌舞伎座の休憩室で正宗白鳥と宇野浩二にお会いして、話が高村光太郎におよぶと私は宇野に言った。

「高村光太郎には一種の構えがあったね、若い時分からずっと続いていた構えが。」

宇野浩二は即ちスルドイ語調でいった。

「あった、高村には構えがあったとも。」

正宗白鳥はただ、あったな、と寛っくりと言われた。

私はさらに宇野に君はどうかというような顔付をして訊いた。

「詩人の伝記を書いているが、どうもすぐ自分のことを書いてしまうね。」

「そうだとも、自分のことを書かなければ何も書けないよ。」

小説博士のかれはちっとも笑わないで、当然だといえる顔付で答えた。

高村光太郎は明治十六年三月東京下谷区で生まれた。私とは六つ年上である。東京美術学校彫刻科卒業、砕雨と号し与謝野夫妻の『明星』に短歌を発表、つまり同人雑誌で勉強した形である。三十九年三月から四十二年まで外遊、ニューヨーク、パリに滞在、人の話では借りたアトリエに閉じこもり、碌々外に出なかったこともあったそうだ。