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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
『屋上庭園』は一冊一円の雑誌であっていまなら千円くらいに換算され、田舎のさびしい郵便局でカワセを組んで送金した。たったこれだけのことでも、月給八円もらっている男にとっては大したふんぱつであり、そのために詩というものに莫大なつながりが感じられた。『邪宗門』を持っている者は北陸道では私一人であろうし、雁皮紙のように美しい四六倍判六号組みという高邁ハイカラな詩の雑誌『屋上庭園』を購読している者は私一人だったからである。
この『屋上庭園』は木下杢太郎、吉井勇、長田秀雄が同人であったが、第弐号の「おかる勘平」という白秋の詩によって発売禁止になり、第弐号でつぶれた。この年の一月に『スバル』という森鴎外を背景にもった立派で権威のある雑誌が創刊された。白秋の詩が毎号掲載されていて、私はあくことなく愛読した。当時白秋は私より四つ上の若さで、田舎で遠く眺めているとすでに大家であって、私なぞ寄りつくことも出来ない隔たりがあった。
処女詩集『邪宗門』は明治四十二年代にあって、自費出版の費用は百円ほどかかったと聞いていたが、その年の暮までに福岡県柳川町沖端の酒造業、北原家は酒蔵の火災によって破産していた。