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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁
その生涯の大きさと正実とをくしくも理想として抱いていたかれは、過失なくその大きさと逞しさ、その上に、こまかい鋭い人格完成をなしとげたのであるが、見世物の群衆はどんなわけからか彼の周囲に集まり、わいわい騒いだのであろうと私は思った。それは死んだ妻を恋うという一つの日本人が控え目にしていた現われを、光太郎は最後まで隠さなかったからであった。われわれ日本人は妻との情事はいつも死後も、これを草ふかき土中にうずめて悲しんでいた。ひとの前で語るべきではないという太極の上に立っていた。
光太郎の死は巨星墜つということばどおりのものを、私に感じさせた。巨星墜つというばかばかしいことばが、やはりかれの場合ふさわしく、それだけ私は依然距たりをおぼえていたのだ。巨星は映画演劇におもちゃにされたが、依然見事に聖人高村光太郎にびくとも影響をあたえていないし、そのために彼を軽く見るという境にまで行きつかなかった。そして空騒ぎが済むとかれら興行師のともがらは、騒ぎをしずめて去って行った。私は人の生き方のまじめさ、性質にある善意識の透明さを、ずっと昔に感じたそれを、いままた残念ながら魅せられ新しくされた。