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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《我が愛する詩人の伝記(わがあいするしじんのでんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 頁

青空文庫

昭和十七年(一九四二年)五十七歳

これが萩原が死んだ年号と、歳である。私はいま自分の年齢で計算してみると萩原よりも十二年も横着に生きのびたことだ。運がよいのか悪が強いのか、お前みたいにズルイ奴はいないよ、十二年も生きのびるなんていい加減にしろと、萩原朔太郎は笑いながらいうかも知れない。ほんとに済みませんです、うかうかと生きて来て了ったが、多分僕もそろそろお暇をいただく時分だから、君にも会えそうな気がするが、どこでどう会うものか、誰も死から還って来た人が喋ってくれたためしがないからね、併し十二年も君より余計に生きていたことは、何と言っても申訳がない、つい、昨日のように思えるが、生きていて物を書くということは偉大なる暇潰しであり、その事のためにずるずるに生きて来たのだ。君とはお互にどちらが先きに死に、どちらが後にのこるということを話し合ったことが、不思議にも一度だってない、君は後事を托するということを決して口にする人ではなかった。そこに他人のうかがえない心の守りを持っていたことは確かである。そういう事を人に言うことが嫌いなたちなのだ。

郵便局の窓口で