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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
前にも、それについては、元康も意見を吐いたことはあるが、一笑に附されてしまった。何かにつけ、質子の身であり、若年だし、帷幕の錚々たる武将たちの間では、元康の存在など、余りに小さかった。
(――でも、押しても、いうたものか、いわぬものか)
元康は、雪斎の書状を前に、考えていた。――すると、北の方に側近く仕えている老女がまた見えて、奥方が何か最前からひどく御機嫌がわるいので、ちょっとお顔を見せて上げて下さるように――と、当惑顔にいって元康の訪れを促すのであった。
彼の夫人は、自分だけのことしか常に考えていない女性らしかった。
国事とか、良人の立場とかには、まったく無関心であった。ただ自分の起居している奥と、良人の愛情の注意にしか、頭のつかえない人であった。
老女も、それをよく酌んでいるので、元康が、
「今参る」
と、答えたまま、なお、家臣と話し込んでいるのを見ると、重ねてはいえぬように、ただもじもじしていた。
するとまた、追いかけに、奥の侍女が、老女へ囁きに来た。老女は仕方なげに、
「あの……恐れいりますが、奥方さまが、頻りと、おむずかりなされていらっしゃるそうでございますから」