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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

夕顔の門

「よい主を持った。信長様に次いで果報者は、この俺だぞ」

彼はそれ以来、信長を主君と仰ぐばかりでなく、信長の一弟子という心をもって、信長の長所に学び、由来無学鈍才な自身を研くことに、一層心をひそめていた。

夕顔の門

たしかに、急激な速度で、世の中は変革しかけている。けれどどう眺めても、そう動いてもいないように見えるのが、世の中の表面でもあった。

桶狭間の一戦の大捷は、さすがに十日余りも、清洲の城下を昂奮の坩堝と化して、盆も夏祭も一緒に来たような騒ぎだったが、それも常態に回ると、鍛冶の家には鎚の音が聞え、桶屋の軒には桶を叩く音が洩れ、厩の裏には馬糧を刻む音が静かにして、各※(二の字点、1-2-22)がその職分に精出し始めると、炎天の城下町は、人通りさえ稀れで、からんと、往来の道ばかり白く乾いていた。

「木下様」

誰か、呼ぶ声に、

「おうい」

藤吉郎は、昼寝していたが、眼をあいて、床莚から首だけ擡げて云った。

「どなたかな?」

「志村の家内でござります」

「やあ、お向いの御内儀か」

「ちとばかり、手作りのそう麺を冷やしましたので」

「また、戴き物でござるか。それは恐縮」