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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁
乱雲
また、体じゅうがぞくぞくするような欣びに襲われてもいた。――しかしそれ以上に、このさり気ない質朴な武家娘が、どうして自分を見込んだかと――ふと恐ろしいような心地もしていた。
乱雲
たそがれ頃。
彼は、茫然と歩いていた。
弓之衆の浅野又右衛門の家から出て、桐畑のわが家のほうへ。
(――御両親様がおゆるしくださるならば、木下様へ嫁ぎとうございます)
寧子のいったことばが、その声が、姿が、彼の頭から消えなかった。
こう歩いていても、人ごこちのない程、彼は、正直な歓びに今つつまれていた。けれど、寧子が余りにはっきりいったので、すこし不安な疑いも起った。
(ほんとに、彼女はおれが好きなのかなあ。それ程好きなら、前からもっと、おれに好意を見せていそうなものだが?)
以前から、手紙をやったり、内緒で贈り物を届けたりしていたのに、それに対しては、まだ一度も――俗にいう色よい返辞などはくれたこともない寧子であった。
その反響がない点からも、彼は当然、寧子が自分へ、好意を持っていないものと思っていた。
犬千代へ向って。また、父の又右衛門へ向って。――あんなことを云い張ったのも、実は、藤吉郎の強引に過ぎなかったのである。