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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

要は、

(その死地を如何にして破るべきか。死地を生地にするか)

にあった。

「八郎五郎」

「はッ」

杉浦八郎五郎という物見は、元康からふいに呼ばれて、大きな眼を上げた。

「そち一名だの。このまま、前進して味方に利ありという意見を述べたのは」

「左様でございます」

「何をもって、そう信じたか」

「ふかい理由もございませぬが。鷲津、丸根をはじめ、善照寺、中島、その他数ヵ所の敵の砦は、それを聯絡すれば、大きな敵ではありますが、一箇一箇に見れば、元来、一箇一箇のものでしかございません」

云い方がおかしいので、誰か苦笑をもらしたが、元康は、厳粛になって聞いていた。

「うむ。一箇一箇。それにちがいない。――して?」

杉浦八郎五郎は、よく舌のまわらないような物云いする男だった。

物見役には、動作も鈍くて、すべてがのろい男だったが、元康は、側物見として、大勢の隼の中には、きっと一羽、この鈍な鴉を交ぜて使った。

「はい。……ですからその、敵のたくさんな砦を、一箇一箇に、力を分けさすように、御合戦を計れば、大丈夫、お味方に勝目があると存じましたので」

やっと、思うことを、そんなふうにいって、八郎五郎は、額の汗をふいた。