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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

次の間、その次の間にも、勿論家中の重なる者が詰め合っていた。

藤吉郎の如きは、ここから遥か、幾部屋の端にいるのか知れなかった。

なべて息づまるような沈黙が、おとといも昨夜も今夜も占めていた。

不吉なので、この場合、にも口になど出せないことだが、心ひそかに、

(通夜のような――)

と、その夜の白い燭と並居る人々とを見まわした者もあったろう。

その中で、時折、

――は、は、は、はッ……

と聞えるのは、独り信長の笑う声であった。

どういうことについて語っているのか、末の者にはよく分らないのであるが、頻りと、信長の哄笑するのが、二の間三の間までも、時々聞えて来た。

――かと思うと。

ばたばたばたと、お表から取次役の者が、いつにない早足で、大廊下を駈けてくる。それッと、待ちかまえていた信長の侍側が、戦況の報告を聞き、或いは、前線から来た軍状を取り次ぎ、信長の前に披露する。

「あ。……これは」

代読して、信長へいう前に、柴田権六すらも、顔のいろを変えていた。

「殿」

「何か」

「ただ今、丸根の佐久間盛重の砦から、今暁より四度目の早打が到着いたしました」

「あ。左様か」