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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

虹

「……?」

何処のどういう地点まで来ているのか、分っている者は一人もいなかった。彼を、小隊の組頭と頼って、彼のまわりには、十七、八名の足軽が生き残っていたが、どれも皆、うつつの血相である。人間の顔いろではない。

「……はてな?」

藤吉郎は、耳をすました。

雨は、霽れて来た。風も小やみだし、雲の断れまから、また強烈な陽がこぼれている。

夕立のあがり頃から、田楽狭間の阿鼻叫喚も、雷鳴の行方と一緒に、遠く消えて、その後を、実に何のこともなかったように、蝉や蜩が啼いている。

「整列ッ」

藤吉郎は、号令した。

足軽は横隊に並んだ。

頭かずを眼で読むと、三十名の組が十七名に減っている。しかし、そのうちの四名は、組頭の藤吉郎も、見たことのない顔の足軽だった。

「おい、四番目の」

「はッ」

「そちは、何処の組の者だ」

「遠山甚太郎殿の手の者ですが、田楽狭間の西の崖で戦っているうち、崖から辷り落ちて本隊を見失い、ちょうどそこへ、敵を追いかけて来たこの組に交じって、そのままこれまで来てしまいましたので」

「そうか。七番目のは」

「はッ。てまえも、乱軍中に、自分の組で戦っているつもりでしたが、気がついてみると、木下殿の組にいました。