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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 頁

青空文庫

敵国巡遊記

一目散に家に帰った。そして眠ることになると実に屈託のない鼾声であった。

若党のごんぞは、いつもの朝より早く起きて、

「旦那さま、お支度なされませ。そろそろお時刻でございますぞ」

枕元に坐って起した。

おうと刎ね起き、顔を洗う、飯を喰う、旅支度にかかる。

こういう起居の手ばやくて活溌なことは、信長仕込みというか、藤吉郎もおそろしく気短かであった。

「行って来るぞ」

何処へとも、召使にも云い残さない。命令の卯の刻すこし前に、彼も、城下外の西の街道口、豪農道家清十郎の宅まで行き着いていた。

敵国巡遊記

「やあ、猿どのか。おぬしもきょうのお供に見えたか」

豪農道家清十郎の門口に立っていた田舎侍が、彼を見ると呼びかけた。

「や、於犬」

これは意外といった顔つきの藤吉郎であった。

その犬千代が来ていることはさして驚くに足らないが、服装がいつもとまるで違う。髪の結いようから大小、脚絆の拵えまでが、どう眺めても草深い田舎から出た野侍としか見えないのである。

「これはまた、どうした仔細」

訊ねかけると、

「御一同もすでにぼつぼつ揃うて在らせられる。はやく通れ」

門衛のように犬千代はいう。