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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
一間へ戻って、旅の日誌か何かつけていた恵瓊は、ふと起って、
「小六殿」
と、彼の居間を窺った。
見えないので、また、
「こちらか」
持仏堂をのぞくと、小六は、先祖の位牌を前に、腕ぐみして坐っていた。
「どう御返辞なされたか。信長殿のお使いに」
「まだ帰りおらぬ。応対しておればおるほど面倒なので抛ッたらかしてある」
「帰るまい。あの容子では」
恵瓊が口をつぐむと、小六もいつまでも沈黙していた。
この客僧の恵瓊というのは、字は瑶甫、安芸の国沼田の産れで、京都東福寺に入って僧となった者である。
両三年前から、東福寺を出て諸国を巡錫し、乞われて、しばらく駿府の家人の第宅にいたが、義元の死後、内政ぶりもおもしろくないし、禅語に耳をかす者などは稀れなので、いつの頃か、そこを去り、折ふし蜂須賀村へ来たところ、小六正勝の家に法要があったので、そのまま半月ほど逗留していたのであった。
「小六どの」
「何か」
「聞けば、きょう見えた使者は、以前この家に下僕として飼われていた男じゃそうだな」
「猿とのみで、名も知らねば、どこの馬の骨かも知れぬのを、矢矧川のあたりで、拾うて来て召し使っていたことがある」