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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

「……存外、強気でもなさそうな」

と、思ったことだった。

事実、村重の顔いろはすぐれていなかった。こんな元気で、また自信のないことで、どうして織田信長ともあろう時代の立者と、好んで事を構えたのか。強いてそのひとから離れたのみか、敵にまわして戦う気など起したものか。――官兵衛にはまず疑われた。

「やあ、しばらくだったな」

漫然と、村重からいう。それさえ世辞にきこえるほど、媚びた態度がどこやらにある。猛将村重のこんな態度に、彼はいよいよまだ村重の心中には、多分な迷いがあるものと推察した。

「お元気か、その後も」

と、まず官兵衛も、無難なところを答えておいて、にやにやと彼の容子を凝視していた。村重は、生来の正直さが、こんな場合にもつつみきれず、官兵衛の眼でなでまわされているあいだに、ひどく羞恥して、顔をも赤めたいようにむずむずしていた。

「ときに、何用で参られたか」

「いや、おうわさを聞いたのでな」

「むむ、それがしが旗挙げの儀か」

「えらい事をやられたな」

「世間は何といっておる」

「是々非々か」

「まちまちだろう。良くも悪しくも、戦ったあとの沙汰だ。いや人間の評は、死後でなければ定まらん」