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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

そして、城壁の下へ、近々と寄って、矢ごろを測り、丁ッと射ると、矢を立てた尻は、見事、下へ転げ落ちた。

ところが、とたんに城中からも、ひょうッと、一本の矢が飛んで来て、又四郎の喉に突き立った。

当然、彼は仰向けに倒れた。

味方は、声をあげて、快哉をさけんでいたが、その体に驚いて、たちまち彼のそばに駈け寄り、家康のそばまで、抱えて来た。

「……不愍な」

と、家康は、自分の手で、矢を抜いてやった。そして、

「小屋へ退げて、よく養生させてつかわせ」

と、命じた。

その晩、家康は陣所のうちで、干飯粥を喰べていたが、ふと、箸の間に、

「もう息をひき取ったであろうな」

と、左右へ訊ねた。

侍臣たちは、いやまだ死んだ届けはして参りませんがというと――家康は急に、

「そうか。では息のあるうち、ひと目、見舞うてやろう」

と、箸をおくとすぐ、夜中なのに、傷病兵のいる小屋へ出向いて行った。

前触れも何もないので、軽い負傷者は、笑いばなしなどしていたし、重傷者は横たわって呻いていた。

家康が入ってゆくと、そこの一隅に、蝋燭を一本立てて、象戯をさしている男がある。見ると、そのひとりが又四郎だった。