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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

もう地方的事件でも限られた地域戦争でもない。天下分け目の大戦たる様相はいつのまにか充分すぎるほど準備されつくしている。

のこる問題は、ただ秀吉対家康、信雄の二大勢力の鋭角が、どこを会戦地とし、どこまでが作戦地域として、両雄の胸に算定されているか――それであった。

ここ黒田ノ城へも、諜報は刻々、東西から入っていた。

が、伊勢から南尾張方面の形勢は、三月初め頃からとんと分らなくなった。秀吉の西軍が、蒲生、滝川、堀、その他の諸将にひきいられ、ひとたび信雄の麾下に取られた峰の城、星崎城、松ヶ島城などに、猛攻をしかけ、急速な奪回戦にかかり出したことは聞えている。

また信雄が、伊勢の守りを、叔父の織田信照や佐久間甚九郎正勝などにまかせ、にわかに清洲へ移ったことも沙汰され、同時に、徳川方の援将として、水野忠重とか酒井重忠などの手勢が、疾風、伊勢へ馳せ向ったこともかくれない風聞ではあった。

どこの城は、西軍の手におちた。いや再び奪い返した。否、なお対峙のまま、朝夕に、城外戦をくりかえしているなど――紛々と、情報そのものにも、雑音が入り、臆測が加わり、そして戦火が次第に、身近に寄って来つつあるという感覚だけが、慥なもののように思われた。