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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁
そこから駈け降りてくる人々の跫音は、もう異変の突発をかたっていた。もとの客殿へ来てみると、家康の姿はすでにそこにない。べつな一室で、彼はすでに甲冑を着こんでいた。
あわただしい城中の物音が一しきり釜の湯鳴りみたいだった。城外の馬出しの広場で貝が聞え、取る物もとりあえず駈け集まる武者たちの大半が、もうそこでも家康の姿を見なかった。
家康は、火の手の方角を犬山と的確に知ると、ひと言、
「ぬかッたわ」
と、さけんで常の彼にもない急ぎ方だった。
人数の先頭にたち、馬へ鞍をあてて、西北の煙へ向って駈けていた。
本多康重、榊原小平太、松平又七、奥平九八郎なども、われおくれじと、彼に前後した。
清洲から小牧へ一里半――小牧から楽田へ三十町――楽田から羽黒へ同じ距離、さらに羽黒から犬山までは三十町。
小牧へ来ると、もう全貌がわかった。今暁、つかの間に奪取された犬山落城の事実だった。家康は、小牧と楽田のあいだに馬をたて、羽黒、犬山附近にわたる幾ヵ所もの煙を凝視しながら、
「おそかった。家康として、このぬかりはあるまじきこと」
と、痛嘆をもらした。
立ちのぼる黒煙のなかに、家康は、池田勝入の得意顔をおもい泛べた。