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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

身なりは、百姓女に変装するのが、安全であること。道順は、山絵図に従って、なるべく、間道をえらぶこと。

そして、万一にも、敵兵に捕まったら、あくまで百姓女を装って、決して、秀吉の墨付を、見つからぬよう死守すること。

それらの注意をうけて、於通はやがて、ただ一人で、深夜の陣営から立って行った。

「見たか、皆の者」

秀吉は、そのあとで、近習や小姓たちへ云った。

「あれが男であったら、そちたちは、やがて於通の前に、上将の礼をとらねばなるまい。女子であって、倖せじゃよ」

かれの左右の若者ばらは、これは心外なり――というような顔をした。そして、明日にてもあれ、徳川勢と相撃つ日には、獅子児の本性を武勇にあらわし、主人秀吉の今のごとき女尊男卑の失言を訂正させなければならん――と、ちかって、みな、ふくれ面のまま黙っていた。

小ぜりあいの銃声は、明け方から、翌日も、前線の所々で、絶えまなく響いた。

――それを口火に、いまにも、西軍秀吉の大兵が、総攻撃に転じてくるように思われた。

しかし、きのうからの、この手出しは、秀吉の“陽攻”であって、真実のうごきは、犬山を中心とする池田勝入の、岡崎奇襲の準備にあった。