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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 頁

青空文庫

信長は、そのただ一言を聞いただけで、日吉をその場から列に加えて、清洲のお小人の端に使ったのであったが――これを見ても、さむらい奉公の眼目とするところは、使う主人も、仕われる者も、ただ一朝の“事ある日”にあったことが充分窺い知られよう。

さて、余事はともあれ。

脇坂甚内安治は、家をすてて上野へ向ったが、決して自暴や無策の窮余に出たのではない。

(小勢たりと雖も、われと一体の奉公人三十余名あるからには)

と、かたく期していたこと勿論だった。何をか期す? いうまでもない。欺すに事を欠いて、涙をもって男の情をほだし、義をかりて武士の心胆をあざむき去った滝川三郎兵衛を討ってその首を見ることである。

「いかに、母を奪うために、子のなした情の上のことたりといえ、その奸策、その卑劣、やわか生かしておくべき」

というのが甚内の誓ったことだった。

白昼、甲冑の騎馬二、三、兵三十余り、大坂の新市街を東へ一散に駈けつづいて行ったので、市人はみな眼をそばだてたが、余りの小人数でもある。たれもそれが死をきめた合戦に急ぐ人々とは見ていなかった。

甚内の率いる小勢は、平野街道から龍田へ出、その夜は、郡山で夜営した。