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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

「大炊助。新七」

「はい」

「二人して、すぐ行って来い。御厨までだ」

「はっ」

「わしの命をもって、天蔵めを、ひき連れて来い。だが、騙して呼びよせて来いよ。手飼の者もおるし、武力では、一すじ縄ではゆかぬ天蔵のことだ」

「心得ました」

主人の肚に、その決意がすわれば、何の造作もないことと、稲田大炊助と青山新七のふたりは、すぐ御厨村へ立って行った。

森の丘は、鳥のさえずりに暁る。――土豪蜂須賀の砦造の中の一棟に、早くから朝の陽があたっている。

「松。……松ッ」

小六が、眼をさましたらしい。

妻の松波が、

「お目ざめでございますか」

寝所をのぞくと、紙蚊帳のうちで、小六は横になったまま。

「ゆうべ御厨へ遣った使いの両名は戻って来ないか」

「まだ立ち帰りませぬが」

「……ふむ?」

と、案じ顔に呻く。

悪い事をする奴だけに、頭のするどい甥の天蔵。まずくすると、感づいたかな? ――ちと遅いが――と独り思う。

妻は、その間に、紙蚊帳のつり手を外しかけた。その蚊帳のすそに戯れていた亀一は、まだ満二歳にもならなかった。

「亀よ。来い」

小六は抱きよせて、高々と差しあげた。絵に描いた唐子のようによく肥えた亀一は、若い父の腕にも重かった。