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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
今川往来
今川往来
奉公人と奉公人との間の、小さい感情に取り巻かれて、そこに人間を学ぶと共に、日吉は、この松下屋敷を中心として、海道の大勢と、今川、北条、武田、松平、織田などの実力や趨勢にも、だいぶ通じることができた。
(やはり奉公してよかった)
と、思う。
針売りして歩いていたのでは、容易に分らないような内情も、ここでは、時折、知ることが出来た。
もっとも、彼が、ただ喰うため、生きる世渡りのための、碌々たる奉公人に過ぎなかったら、そういうことに触れても、深い実態が小者にまで知れるわけもないが、彼の眼、彼の耳、彼の頭脳が、常に何ものかを求めて、敏感にそれを感受するので、
(ははあ、そうか。……さてはこうだな、ああだな)
と棋客と棋客との対局を、盤の横から観ているように、一石一石の手が、日吉には分るのだった。
駿府の今川家の使者がここや岡崎や、小田原や甲府などへ頻繁に往来しているのでも、或る筋が読めた。
それは。
駿河の今川義元に、天下の覇権をにぎろうとする大望があることを示すものだと、彼は観ていた。
いや、その実現は、遠い将来であろうが、とにかく、理想をそこに置き、他日、京都に入って、足利将軍家を擁し、自身、天下に臨もうとする――その下工作が、ぼつぼつと始まっているに違いない。