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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
若党は、そこの中二階を仰向いて、
「十兵衛様、呼び入れて参りましたが」
と告げた。
狭間のように、壁を四角く切り抜いた窓がある。十兵衛と呼ばれたのは、二十四、五歳の白皙明眸な青年で、書庫の書棚から、本でも索し出していたところか、数冊の書を手にかかえながら、その窓口に、半身を見せていた。
「む、今参る。――階下の縁先にでも待たせておけ」
十兵衛は、下の若党へ、そう返辞して窓口から姿をかくした。
遠くから、日吉は見ていた。なるほど、あんな所に人がいたのか、とその時気づいた。彼処からなら築土の外も見える――
先刻からの自分の挙動を見ていたに違いない。何か疑って自分を調べるつもりだろう。すると、此方もその覚悟でいないと飛んだ目に遭うかも知れない。
日吉が、そう臍を決めていると、若党は彼方から手招きした。そして、
「今すぐ、御当家の甥御様が、そこへ見えられるから、お縁先を離れて、謹んでお待ち申しておれ」
と、いった。
いわるるまま、日吉は、その家の縁先から少し離れた所に坐っていた。勿論、土へじかにである。
そしてしばらく手をつかえていたが、なかなか出て来ないので、そっと首を擡げた。