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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

「駿府のお館様よりお使いにござります」

「そうか」

聞きすてて、嘉兵衛は、つッつと邸内へはいってしまう。

駿府といえば、主筋の今川家。使客はめずらしくはないが、その日、曳馬城の飯尾豊前とのあいだに議した問題もあり、嘉兵衛の頭は、とたんに忙しかったとみえて、日吉のことも、忘れ果てたか、或いは後でというつもりだったか、とにかく黙って奥へかくれてしまった。

「こら、待て」

郎党たちに従いて、一緒に門内へ流れ込もうとした日吉は、早速、門番に発見されて、

「なんだ、その方は」

と、咎められた。

日吉は、泥だらけな手に、泥だらけな藁の苞を下げていた。

顔にも、泥のハネが、乾きかけているのでムズ痒い。門番は、嘲弄されているように、その動く鼻を見たのか、

「何だッ、こらッ」

襟がみへ、手をのばしかけた。

日吉は、少し退って、

「針売りだよ、おらは」

「針売りなど、みだりに入るところではない。抓み出すぞ」

「御主人に聞いてからにおしなさい」

「なにを」

「来いというから従いて来たのだ。今、奥へはいった騎馬のお侍が――」

「殿が、そんなことを、仰っしゃるはずはない。うろんな奴だ」

すると、郎党の能八が、思い出して、日吉を拾いに戻って来た。