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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

汝はそも、夜も明けぬうちから、何で庭を掃いているのか」

「することがございませんので」

「眠ればよかろう」

「もう、寝てしまいました。手前は、きまった時刻だけ眠ると、どうしても体を横にしていられません」

「履物があるか」

「ございまする」

日吉は、一走り、どこかへ走って行き、すぐ土のつかない草履を取って揃えた。

「これ、これ」

「はい」

「そちは、夕刻、邸内へ来たばかりで、その上、もう人並に眠りも摂ったと申すが、どうして、邸の勝手を左様に心得ているのか」

「恐れ入ります」

「何を恐れ入るか」

「決して、怪しい者ではございません。けれど、これくらいなお邸なら、物の在所、御地内の広さ、下水口、火の元、およそのことは、寝ていて物音を聞いていても考えられます」

「ふむ……なるほど」

「お草履も、どこにあるか、先ほど見届けておきました。なぜなら、床より下がって、地面に眠っている者は、てまえと馬しかございません。戸が開けば、すぐどなたでもお草履と、お声がかかると思っていました」

「そうか。悪かったの。何も申しつけずにおいたので、そちは厩に寝たか」

「…………」

日吉は、笑って、何も答えなかった。