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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
日吉が、飛び込んで来ると、おつみは、びくっとした眼を上げた。――そして何をされるかと、恟々として、
「いいがな。いいがな」
と、顔を振った。日吉は、水甕の蓋をあけて見て、
「オヤ。水なんか、いっぱい汲んであるじゃねえか。味噌を擂ってやろか」
「味噌など擂ってくれんでいいわ。邪魔な――」
「邪魔だって、おらは、用をしたいんだ。用をさせろ。漬物出してやろか」
「今、母さんが、出しに行ったがな」
「じゃ、何するんだ」
「ぬしゃあ、大人しくしていたら、母さんも欣ぶによ」
「こんなに大人しいじゃないか。……なんだい。まだ竈の火がつかねえでやがる。おらがつけてやる。どけ、どけ」
「いいってえに!」
「どけったら」
「あれ、そんなことするで、消えちもうた」
「嘘つけ。自分が消したくせに」
「嘘。嘘。ぬしが……」
「うるせい」
日吉は、燃えない薪に焦れて、そこを離れるついでに、おつみの頬を、ぴしゃりと、一つ打った。
おつみが、大きな声で、泣きながら奥へ云いつけた。弥右衛門のいる炉部屋とは近いので、すぐ父の声が、日吉の耳を痺れさせた。
「こらっ、姉を打ったな。男のくせに、女を打ったな。――日吉っ。