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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

(何しに行ったんだろ?)

日吉は、叱言をいわれないのが、かえって気味悪かった。

弥右衛門はやがて、一腰の脇差を取り出して戻って来た。それは納屋の隅に錆びている物とは違って、袋にはいっていた。

「日吉。これはおまえの物だ。欲しければ、いつでも持て」

「え。おらの……?」

「だが、まだまだ、今のおまえでは、この刀は差せまい。差しても、人が笑う。――これを差して歩いても、人が笑わぬようにはやくなれ。いいか、早くそうなってくれ」

「…………」

「この刀は、祖父さんが、鍛たせたものだ」

弥右衛門は、眼をねむって、ぽつりぽつり語り出した。

「祖父さんは、百姓だった。その百姓から身を起して、一旗挙げようとした時に、これを刀鍛冶に鍛たせなすった。その頃まで、木下家の系図という物もあったらしいが――一朝にして、焼いてしまった。祖父さんは、事を起す前に、領主に襲われて、討死してしまいなすった」

「…………」

「そういう人が、わしの子供の時分には、たくさんあった。乱世の慣いだ」

弥右衛門は、呟くようにいう。

いつのまにか、隣の部屋には燈心が灯っている。この部屋は、炉の焔で明るかった。