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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁

青空文庫

すると、同じ想いで、やはり寝つけないでいたものとみえ、日本から連れて来て以来、ずっと側に仕えてきた忠実な下僕の捨次郎が、

「旦那さま。お目ざめでございましょうか。お目ざめなら、ちょっと……」

と、寝室の扉を外から軽くたたいた。

五郎大夫は、臥床から降りて、榻(陶器製の腰掛け)へ腰を移しながら、

「おはいり。――おまえも眠れないのか」

「なあに、私は」

捨次郎は部屋の中へ進んで来て、主人の前に立った。

「宵にぐっすり寝ておりますが……ただあのことが一つ気になりまして」

「あのこととは」

「お子様のことです」

「……ウむ」

と、五郎大夫も、ずきんと、胸の傷む顔をした。

この浮梁にいる間に、五郎大夫はひとりの婦人との間に、子をもうけていた。

彼女は、廬山の向う側の星子という土地から、この浮梁の窯業場へ、働きに来ていた。

姓は楊、名は梨琴といって、気のやさしい――その代り病身そうな細腰の美人だったから、激しい働きには、不向きだった。

話は、少し反れるが。

そもそもこの江西省の浮梁という土地は、日本まで遠く聞えている陶器の産地なのである。遠い唐の時代から窯が築かれ、宋元の頃には、宮廷の御用品を焼く官窯が出来、それに附随する役所だの、商家だの、職人町などで、当時、支那第一の陶府といわれるほど殷賑を極めていた。