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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 頁
こんな言葉では、慰めきれない気がしたが、五郎大夫は、そういうしかなかった。
梨琴は、やっと涙をおさめて、
「あなたにお別れする上に、子まで離すのは、死ぬより辛うございますが、よくよく考えてみると、わたしには身寄りもなく、体も弱いし、この子が大きくなるまでは、生きていられないと思います。そうすれば、この子はきっと、奴隷に売られるか、土匪に手なずけられるか、いい人間には成りっこありません」
もう彼女は、聡明な母の冷静に返っていた。
「――それにひきかえ、長年の間、あなた様のお生活ぶりや、御主従のあいだ柄を見ていると――知らない日本という国がうすうすでも分る気がいたしました。私の国では、あなたの国の人を、倭奴だの、東洋鬼だのと、恐れていますが、それは南の海岸や、揚子江を溯って来る、あの倭寇ばかり見て、それが日本人だと思いこんでいるからでしょう。……けれど私は、そうは思いません」
彼女は、泣いてばかりいた三日分の思いを一ぺんに晴らすように、云いつづけた。
「――日本には行ってみませんけれど、貴方のお心のうちには、何年か住まわせていただきました。貴方はいくら中国の着物を着、中国の女を持ち、中国の家に暮しても、血は驚くほど変らない日本人です。