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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《新潮記(しんちょうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 頁
近づいて来る新島の歩速に合わせて、秀之進は松林の中をそっと道の近くへおりていった。八十吉は別々に来て、秀之進には気づかずに通りすぎた。秀之進はもういちどうしろを見返して、それから新島のあとを追った。
「待ちたまえ」かれはそう呼びかけた、「早水秀之進は此処にいる」
「…………」新島はぴくっと肩をすぼめた。そして刀の柄に手をかけながら、襲われたもののようにふり返った。
ふり返った新島は、ついでに手で笠の紐をひき千切ってはねた。これだけの動作には、不意をつかれて狼狽し、むしろ逆上したともいえる気持のよろめきがあからさまだった。
「向うに草原がある」秀之進はいま自分が出て来た松林の彼方を指した、「誰にもみつけられずに立合いができそうだ、君はそれが望みで来た筈だと思う、おれも此処で片をつけるのが望みだ、来たまえ」
「…………」
刀の柄に手をかけたまま、新島はすばやく道の上下を見やった。追い詰められた獣が逃げ場を窺うような眼つきだった。
「どうするんだ、やるのかやらないのか」
「……拙者は、一人と一人との、勝負が望みだ」
新島が舌のもつれるような調子でいった。
「だから一人と一人だ、おれに助太刀でもあると思っているのか」