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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
」
そら、お談議になったと、静枝がかしこまって、閉口しかけているところへ、
「今日、お髪、お染めになりますか。」
と、風呂の支度をする女中がききに来たので、静枝は、やれ助かったとホッとした。
二
――降り出した雨。
ト、舞台は車軸を流すような豪雨となり、折から山中の夕暗、だんまり模様よろしくあって引っぱり、九女八役は、花道七三に菰をかぶって丸くなる。それぞれの見得、幕引くと、九女八起上り合方よろしくあって、揚幕へ入る――
蚊のなくように、何時、どこで、なんの役でかの、狂言本読みの、立作者が読んできかす、ある役の引っこみの個処が、頭の奥の方で、その当時聴いた声のままで繰返してきこえる。それについて、その役の、引っ込みの足どりまで、九女八は眼の前の、庭の雨を眺めながら、考えるともなく考えているのだった。
――はて、この役は、女だったかな、男だったかな――
ながい舞台生活は、華やかなようでも、演る役は、普通生活とおなじで、そうそう他種類はない。自分についた持役は大概きまっていて、柄にない役はもってこないのだが、どうしたことか、今考えている役がなんだか、九女八には思いだせない、それに、なんでも思い出さなければならないことでもない。