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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

遠藤(岩野)清子

一

それは、華やかな日がさして、瞞されたような暖かい日だった。

遠藤清子の墓石の建ったお寺は、谷中の五重塔を右に見て、左へ曲った通りだと、もう、法要のある時刻にも近いので、急いで家を出た。

と、何やら途中から気流が荒くなって来たように感じた。

「これは、途中で降られそうで――」

と、自動車の運転手は、前の硝子から、行く手の空を覗いて言った。

黒い雲が出ている。もっと丁寧にいうと、朱のなかへ、灰と、黒とを流しこんだような濁りがたなびいている。こちらの晴天とは激しい異いの雲行きだ。

赤坂からは、上野公園奥の、谷中墓地までは、だいぶ距離があるので、大雨には、神田へかかると出合ってしまった。冬の雨にも、こんな豪宕なのがあるかと思うばかりのすさまじさだ。

私はすっかり湿っぽく、寒っぽくなってしまって、やがてお寺へ着いたが、そこでは、そんなに降らなかったのか、午前中からの暖かい日ざしに、何処もかも明け放したままになって、火鉢だけが、火がつぎそえられてあった。

その日のお施主側は、以前の青鞜社の同人たちだった。平塚らいてう、荒木郁子という人たちが専ら肝入り役をつとめていた。