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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

彼女は私にむかって、若い夫人をもって、物質のためにいらいらしていた鼓村さんのことを、よく、こんなふうにいった。

「鼓村さんが、盲目になったら、どんなに名人になるだろうに。」

と、わたしはすぐ、

「浜子のうちが金持ちでなくなると、どんなにこの人は好くなるかしれないだろう。」

その時分のことだった。市川猿之助が、明治座で、「虫」という新舞踊を上演したいが、尺八と箏でやって見たいと相談をうけた。「空華」の時のこともあるし、箏は浜子に頼みたいといった。

オー・イエス! 私は嬉しく心楽しいとき、よくこんなことをいう。猿之助もよく踊らせたい。それに、劇場で、箏を主とし、しかも、あの、芸術的香気の高い、いわゆるお賑やかなケレンの多くない、まことに、どっちかといえば手のこまない、一本一本絃の音をよく聴かせようとする、テンポの早くない箏を、用いさせようというのには、よほど劇場当事者によい印象を与えていることを思わなければならない。これは、真の箏曲というものを、一般に認識させる上に、非常な良好な機会だと思った。しかし、また、冷静に考えて、「虫」であるというには、尺八が主になることもあり得べきことだが、尺八ばかりではまとめてゆけないから、ある部分は尺八に譲っても、結局箏を主にすることになると考えた。