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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
」
美妙斎は眼を窓の外にやって、この娘を送ってやりながら散歩してもいい日だと思っている。
窓は八畳の室にあって、八、九年前には、学生だった紅葉山人が同居して、机を並べて、朝から晩まで文学談をやっていたということや、北向きだから冬は寒いということまで、窓をあけてお茶の水の土手を見渡しながら、美妙斎はへだてなく語った。
そんなに気の合った紅葉が、たった三、四日で、飯田町の祖父母の宅へ越していってしまったのは、窓が北向きで、寒いばかりではなかった。長く、後家同様に暮している山田の母親と、その姑にあたる、とても口やかましい祖母とがいて、おとなしい孫息子を、引っかかえすぎるのに、煩さくなって越したのだが、その事だけは、美妙斎はいわなかった。
神田川にそそぐお茶の水の堀割は、両岸の土手が高く、樹木が鬱蒼として、水戸家が聘した朱舜水が、小赤壁の名を附したほど、茗渓は幽邃の地だった。
徳川幕府の士人の大学、昌平黌聖堂の森は、まだ面影を残し、高等師範学校の塀は見えるが、かかったばかりのお茶の水橋は、細く、すっと、好い恰好だ。錦子も立って眺めた。鶯がささ鳴きをし、目白が枝わたりをしている。