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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁
「おや、お出かけですか。」
と、台助に声をかけたのは、通りかかった芝居道に通じている、芸人の間を歩き廻る顔の広い男だった。その男は、九女八の家の門口で、顔馴染の台助に逢うと、いま聞いてきたばかりの、煙の出るような噂がしたくてたまらなくなったように、
「そういえば、御存じだろうが、あっしゃあ今聞いたばかりのホヤホヤなんだ。話は古いことだが、お宅の師匠は、以前、堀越から、なんという名をおもらいなすってた。」
「升之丞ですよ。」
「そうだってねえ、守住さん。それについちゃあ、面白い話があるんだ、何時、九女八とおなんなすった。」
「さあ、たしか、新富町の市川左団次さんが、謝に連れてってくだすって、帰参が叶ったんですが――ありゃあ、廿七、八年ごろだったかな。」
「そこなんだよ守住さん、御勘気に触れて破門された時に、師範状を取上げに行ったのは、談州楼燕枝(落語家)だったってね。それがね、宗家へおさめねえうちに、その師範状をなくしちゃったんだとさ、すっかり忘れてると、急に帰参が叶ったので、奴さん弱ったのなんのって、でね、九代目の女弟子で、もとが岩井粂八だから、粂の字を九の宇と女の字にした方がいいって、こじつけちゃったんだそうだが――滑稽さね。