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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

「でも、あたし、お妾はいやです。」

とまで、ギリギリと、決勝点近くまで、モルガンは押詰まっていった。

「お妾さんでない。お雪さん、あたくしの夫人です。」

モルガンは、ちゃんと正妻にして、立派に結婚するという。

なんといったらよいのか、断わるに断わりきれなくなってしまったお雪は、

「おっかさんが何と申しますか、よく相談して見て――」

最後の逃路は、母親よりなかった。古風な、祇園の芸妓さんのお母あさんばかりではない。まだその時分には、牛肉を煮る匂いをきらった老女は多かったのだ。異人さんではと逃げを張るのは、こうなると、母親が頼みだ。

しかし、お母さんを救いの手に持ち出したことは、古くさい日本的な断わり方だと笑えないほどのヒットだったのだ。その時モルガンは、燃えあがった若い血の流れる体を、冷い手で逆に撫でられたように、ゾッとしたものを受けとったのだ。

それは、誠によくない思出だった。彼が日本へ慰めを求めに来た失恋の所以は、相思の令嬢の母親によって破られたのだったからだ。彼は厭な顔をしないではいられなかった。なぜなら、紐育社交界の有名マダムより、なおもっと、日本の古都の芸者ガールの母さんの方が、ものわかりがわるく、毛唐人に対して毛ぎらいが甚だしかろうことは、いうまでもないと思ったからだ。