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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (下)(いちかわくめはち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 138,172 字 · 277 頁

青空文庫

――だから、言って見れば、泡鳴に、霊の恋が芽生えさえすれば好いのだ――

けれど、それは、半獣主義を標榜する人に無理はわかっている。といって、それがそうならないからこそ、もろともに悩み呻吟くのではないか――

彼女は、窓の外の、軒端で笑っているような、雀の朝の声をきくまいとした。蒲団をひきかぶるようにして、外は、霜柱が鋭いことであろうと思った。なにもかもが、きびしすぎると感じながら、自分の主張は曲げられないと、キッシリと眼を閉じていた。見かけだけは仲の好い、新婚夫婦に見えて、霊肉合致の域にいたるまで、触れさせまいとする闘いに、互に心肉の鎬を削っている、妙な生活!

去年の今ごろ(明治四十一年)は、日本婦人の権利擁護のために、治安警察第五条解禁の運動に朝から晩まで駈け廻っていたものだが、今年は肉と霊との恋愛合戦に、血みどろの戦いだ!

彼女は、首を縮めて、ふとんをかぶると、大丸髷が枕にひっかかった。

*

許す許さぬの解決はつかないままだが、日が立つにつけ、この同棲生活の厳寒も、いくらかゆるんで来た。いらいらした霜柱も解けかけて来た。杉の木の二、三本あった庭には、赤坂からもって来た、乙女椿や、紅梅や、海棠などが、咲いたり、蕾が膨んだりした。