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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

そんな時にこそ大丸が会場であるはずなのだが、町内の関係で油町の加賀吉という大店で開かれた。そこはたしか山岸荷葉氏――紅葉門下で、少年の頃は天才書家として知られていた人である――の生家で、眼鏡や何かの問屋だった。年の暮のえびす講などに忘年芝居を催したりする派手な店で北新道のあたしの家の並びの荷蔵に、荷車で芝居の道具を出しに来たりしていた。その店が会場となり演説の卓がおかれた。

そんな事はお江戸開闢以来のことと見えて、アンポンタンの幼い頃にも忘れない不思議な光景を残している。まず、弁者は、その近辺でも当時の新智識と目されたものと見えて洋服を着ていることの多いあたしの父であった。洋服が新時代の目標であったと見える。尤も、官員さんの一人もいない土地であって見れば、私の父がハイカラだったのかも知れない。明治十二年官許代言人、今から見ればとても古くさい名だが、十二人とかしかなかった最初の仲間の一人であったときいている。

前の日まで、憲法ということの講釈を、若い旦那たちの幾人かが熱心に聴きにきた。その人たちが世話役でもあったのであろう。その当日も机をはこんだり、会場のしつらえを問合せに来たりして、いよいよ午後六時前となると、傍聴ファンの動作研究会というような集りになった。